准教授 小路 晋作Shinsaku Koji
リテラシー学修主担当
- 専門分野
- 生態学
- 研究室
- 農学部棟B108号室
- 所属/前職
- 自然科学系(創生学部)
受験生へのメッセージ
創生学部では教員からテーマを与えられ、手取り足取り教えられることはありません。本来のテーマを見失いがちになることもしばしばです。はじめはこうした状況に戸惑うかもしれませんが、教員らと議論しながら自分で問いを立て、試行錯誤しながらデータを取り、結論を導く経験は一生の糧になるのではないかと思います。
略歴
1971年東京生まれ。博士(理学)、専門は生態学。2002年金沢大学自然計測応用研究センター教務補佐員(金沢大学「角間の里山自然学校」研究員)、2004年国際昆虫生理生態学センター(ICIPE)派遣研究者、2006年金沢大学自然計測応用研究センター21世紀COEポストドクトラルフェロー、2007年金沢大学地域連携推進センター特任助教、2014年同センター特任准教授などを経て、2017年より現職。2007年より能登半島・珠洲市にある金沢大学能登学舎に常駐し、「能登の里山里海」の自然・文化を活かした地域活性化のための人材養成事業を担当するかたわら、農地における昆虫群集の動態を日本とアフリカで研究した。
関心のある教育研究開発テーマ
- テーマ1
- 農法と景観構造が水田の生物多様性に及ぼす影響
- テーマ2
- 耕作放棄地の管理・活用に伴う節足動物群集の応答様式
- テーマ3
- 混作による農地環境の複雑化が害虫および天敵類の群集に及ぼす影響
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個体識別マーク(8349番)を施されたアオカメノコハムシ(1999年、金沢)。標識と捕獲を繰り返して、野外条件下における個体数や生存率などを推定した。
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捕食者がトウモロコシの害虫(ズイムシ)に及ぼす影響を調べるために設営した野外実験圃場(2005年、ケニア)。捕食者除去区では「落とし穴トラップ」と「手づかみ除去」の波状攻撃により、捕食者の数を減らした。処理区間でズイムシの数を比較した。
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イネの株上に棲む昆虫・クモ類を採集するため、稲株に枠を被せて電動式の吸引装置で吸い取る(2011年、珠洲)。水管理や農薬が異なる「不耕起V溝直播栽培」と慣行的な「移植栽培」の水田において節足動物群集を比較した。調査用具の材料は、ほぼ全てホームセンターで入手できた。
研究キーワード
- 農業生態系
- Agro-ecosystems
- 生物多様性
- Biodiversity
- 環境保全型農業
- Environmentally friendly farming
- 生態系サービス
- Ecosystem services
- 里山
- Satoyama
関連リンク
関心のある課題
- 農法と景観構造が水田の生物多様性に及ぼす影響
- 耕作放棄地の管理・活用に伴う節足動物群集の応答様式の解明
- 混作による農地環境の複雑化が害虫および天敵類の群集に及ぼす影響
- 昆虫の数の変動パターン。特に大発生や長距離移動
- 熱帯の昆虫における数の変動
学生時代からどのように課題発見・探求を続けてきましたか?
課題解決のためにどのようなアプローチをとりましたか?
どのような教育・研究をしてきましたか?
大発生して人間に悪影響をもたらす「害虫」は、動物界全体を見渡せば一握りに過ぎず、大多数の生き物は一定の範囲内で数が増減しています。8〜11年周期で大発生を繰り返すハイイロアミメハマキ、個体数の年変動がきわめて安定しているヤマトアザミテントウなど、動物の数の変動パターンは様々です。私は学生時代、エルトン「Animal Ecology」、斎藤隆「森のねずみの生態学」などを読んで、動物の「数」をめぐる不思議に関心をもち、研究を続けてきました。ラジオを相棒に山に籠もりアザミテントウを数え続けた大学院時代、ケニアの農村でワーカー達と共に泥だらけになって虫を数えたポスドク時代・・・これらの経験は一生の宝物です。野外での計数、観察、計測を積み重ね、データからパターンを見いだすのが私のアプローチであり、調査の条件設定が最重要となります。また、(1)調査地選びにこだわること、(2)一つの現象に対して様々な側面から複合的にデータを取ること、(3)余計な事は考えずにデータを取りきること、(4)心身の健康、運、根気などが重要だと思っています。いつもうまくいくわけでは全くなく、偉そうなことは言えませんが。
創生学部の教員として挑戦したいこと
これまで携わってきた「能登里山里海マイスター育成プログラム」では、能登半島・珠洲市の「能登学舎」に常駐して、地域資源を活かした能登の再活性化を担う社会人を支援してきました。農産物の産地化、里山の獣害対策、グリーンツーリズムなど、多岐にわたる課題研究を、専門家の助言を受けつつ個別指導しました。この経験を活かし、農山村をフィールドとしたPBLを実践すると同時に、成果を社会に還元していきたいと思っています。学生が生物学や農学の発想のみにとらわれず、地域のステークホルダーとの連携を通じて、産業や地域の問題等について幅広い知識と素養を身につけるよう尽力したいと思います。
メッセージ
高校生の方
創生学部では教員からテーマを与えられ、手取り足取り教えられることはありません。本来のテーマを見失いがちになることもしばしばです。はじめはこうした状況に戸惑うかもしれませんが、教員らと議論しながら自分で問いを立て、試行錯誤しながらデータを取り、結論を導く経験は一生の糧になるのではないかと思います。
大学生・大学院生の方1
農地や森林で生き物を見ていると、人間の活動が野生生物に大きな影響を与えていることを実感します。応用の現場で、基礎研究としても面白いテーマを追求しませんか。また、研究を深めるだけでなく、研究費獲得、社会連携や情報発信にも一緒に挑戦したいと思っています。
大学生・大学院生の方2
基本的な調査手法やデータ分析法を身につければ、昆虫類は環境評価の指標として有効です。また、虫さえいれば地球のどこでも研究が可能です(近くにホームセンターがあれば言うことなし)。昆虫の生態はまだまだナゾだらけです。皆さんと一緒に、農業環境における昆虫の興味深い現象を見いだしていきたいと思っています。